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鼻毛、聞いてる?

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12月30日に転倒した。大転倒をした。
転ぶとき、人は膝からいくのだなーと思いながらアスファルトに両膝をついた。勢いよく転がったので、気が付けば歩道の真ん中で仰向けになり、冬の空を見上げていた。12月とは思えないくらい、暖かく青い空だった。

アスファルトの小さな起伏に躓いたのはショックだった。転びかけて体勢を立て直そうとしたのに、それも叶わなかったのはもっとショックだった。ひとつひとつの行動と思考がスローモーションで記憶されている。

服は破れ、両膝から出血をした。
そのままドラッグストアに行くと、店員さんが納得した顔で絆創膏の並んだコーナーに連れていってくれる。世界がやさしい。

キズパワーパッド系の絆創膏は【ハイドロコロイド製剤】と言うらしい。墾田永年私財法にも似たリズム感のある響きだ。思わずハイドロコロイド製剤、墾田永年私財法、ハイドロコロイド製剤、墾田永年私財法と繰り返し声に出してしまった。

消毒して乾かすという昔ながらのプロセスは否定され、今は乾かさないまま、己の体液で自己治療を早めるのが標準とされている。自分の足腰は老いていくが、傷を治そうとする力はまだ存在しているらしい。

そういえば、コロナで入院したときも呼吸が満足にできず死にかけているのに、髭と鼻毛はいつも通り伸びようとしているのが不思議だった。生きている。生きようとしている。ただ、その生命のエネルギーを自分の意識で割り振ることは容易ではない。命の主が死んでしまったら、鼻毛が伸びても何の意味もないというのに。鼻毛、聞いてる?

閑話休題。
1月2日。まだ違和感と痛みはあるが、膝は回復に向かっていることを実感している。すごいな、キズパワーパッド

年が明けてすぐ、能登沖の地震と羽田空港の事故が続いた。
僕たちは日常をいつも通り生きて、買い物をして、そのお金が被災地に税金として巡っていくイメージを持てば良い。自粛したくなる空気感もよく理解できる。ただ自分は、「意味」を意識して行動するよ。お金よ、巡れ、届け。そのために仕事も一生懸命する。僕たちの日常は無力ではない。

僕たちはなんて不安定な大地の上で暮らしているのだろうと改めて思う。揺れなければ消えない命もあった。苦しい。一方で、様々な企業や個人の支援の動きに感動もする。閉塞感を覚えることの多い令和の時代に、救われるような気持ちにもなった。

2024年。新しい年になったからといって、特別な抱負や目標があるわけではない。助走は秋から始めるに限る。通過地点の今の景色を眺めながら、予想外の出来事に自分の命の価値を考えた。何歳まで生きられるかは分からない。ただ、元気で健康でいられる時間は確実に削られ、事故や災害に遭遇する確率は日々高まり続けている。

悔いのない人生を決めるのは自分だが、「あの人は悔いのない人生を過ごした。そしてこんなものを残してくれた」と周囲の人に言ってもらえるよう過ごしていきたいと思う。言葉にして示していこう。

大丈夫。それでも鼻毛は伸び続けている。
僕は今年も元気だぞ。

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