東野圭吾さんのデビュー作、放課後読了。
放課後
著者: 東野圭吾
出版社: 講談社
サイズ: 文庫
ページ数: 353p
発行年月: 1988年07月
本体価格 571円 (税込 599 円) 送料込
「彼女たちにとって最も大切なものは、美しいもの、純粋なもの、嘘の
ないものだと思います。それは、時には友情であったり、恋愛であったり
します。自分の肉体や顔の場合もあります。いや、もっと抽象的に思い出や
夢を大切にしているケースも非常に多いものです。逆にいえばこういう大切な
ものを破壊しようとするもの、彼女たちから奪おうとするものを、最も憎む
ということになります」
つまり、人は壊れやすい。
そして、人は人を容易くも破壊してしまう生き物であるということだ。
卵を抱えて生きているといってもいい。
消えそうな炎を抱いて走っているといってもいい。
消さないように、壊されてしまわないように、生きている、誰かと関わっている。
生きた時間を重ね着のように。
次第に、精神も図太くなっていくのかもしれない。
だけど、必ずなるってもんでもない。
成熟を見せないままの、青いリンゴ。
大人という区分で、人の弱さや強さは語れない。
涙の壷が乾かぬ限り、脆さはずっと存在する。 だから、人は、いつも青春の
風に吹かれたがる。
それが裸のままであることを承知しているからこそ。
僕は、今日も、大人の得意な笑顔を作りながら。
重ね着の中のありのままを、何一つ見せることなく、一日を生きた。
それはまるで、永遠の放課後と形容し得る、ストップモーションの時間だった。