中学一年生の頃に、近所にやってきた野良犬でした。
夜だけは家で泊めてあげることにして、昼間は外で、他の犬たちと遊ぶ。
野良犬とは思えない毛並みの美しさ、穏やかな表情で、あーちゃんはいつだって
近所の人の人気者だったのです。
5月、ある日。
保健所の人たちがやってきて、あーちゃんと、その仲間の犬たちをみんな連れて
行ってしまいました。
狭くて暗い檻の中。あーちゃんだけは、助けてあげることが出来ました。
でも、あーちゃんと一緒に遊んでいた他の犬たちを、僕は、もう二度と、太陽の
下へと連れ出してあげることは出来ませんでした。
その子たちの運命を知っていて、でも、子供である僕には当時、まだ、何を
どうしてあげることも出来なかったのです。
「僕たちは外へは出られないの?」
(ごめん、ごめん、ゴメン!!!!)
絶叫のような鳴き声。
どうして? と、冷たい檻の中から問いかけてくる瞳。
僕は、あーちゃんに一生懸命愛を注ぐことで、彼らに応えていくことを決めました。
あーちゃんは仲間の分まで生きていく ― だから。
手術から一日が経って。
あーちゃん、帰宅。
自分のお気に入りの部屋に落ち着いて、少しほっとした様子なんだそうです。
乳ガンは3箇所。どれも、上手に切除できました。
今はこれからは、転移なく、大事なく、ただ、あーちゃんがのんびりと、陽の当たる
部屋で過ごしてくれることを祈るばかりです。
大切な、大切な、命、命たち。
ずっと、一生懸命、祈っていきます、どうか、どうぞ、と、心から。