2020年7月1日、経営者になって15年が経った。
特に生活が楽になったわけでもない。コンビニで買うアメリカンドッグは根元のカリカリした部分まで残さず食べるし、歯磨き粉は限界を突破した後3回くらい奇跡を起こして使い続ける。大した資産もなく、唯一自慢できることといえばTポイントが17万円分貯まっていることくらいだ。
2年前には頸椎椎間板ヘルニアになってしまった。リハビリとトレーニングを続けて、どうにか腕は動くようになったが、低気圧がやってくると地獄の苦しみに襲われる。デスクワークからの引退も勧告された。「文章を書く仕事をしているのですが?」「長生きしたくないの?」
なんとかショックだとか、新型インフルだとか、震災だとか、コロナ禍だとか。景気が冷え込むたび、心はがりがりと削られる。月末の支払いを終えてなんとか今月も生き延びることができたなと安堵して、それを繰り返して15年が経ってしまったというのが正直な実感である。ここからはさらに、病気だとか老化だとか、抗うことのできない運命と闘っていくことになるんだろう。そういう年齢、43歳。
音楽に写真に、文章に詩歌に。仕事ともリンクさせつつ、表現に関するあれやこれやにもっと時間を費やしたいという想いもある。自分の信条は「売るのではなく選ばれる」こと。自分という商品をちゃんと伝えながら、それに呼応してくださる方々と一緒に生きていけたらいい。
いろんな方へ感謝の気持ち。感謝しかない。
伝えにくいことを、言葉を選んで教えてくださった。壊れないように、盾になって守ってくださった。ひとつひとつの音声がよみがえり、映像で浮かび上がってくる。その恩を返すこと、恩を送ること。ちゃんとしていかなくてはいけない。
通過点に過ぎない、この場所。
まだまだだ。まだまだを克服しようとして世界を知れば知るほど、知らないことの多さに潰されそうになってしまう。年数を重ねていけば、もっと自信がついていくものだと考えていた時期もあった。実際は逆だ。天狗の鼻をへし折られて、謙虚の森に身を隠したくなる。世界はあまりに、僕には広い。
丁寧に生きていく。
それを決めた。
16年目の朝。