山陽電車の3000系トップナンバー「3000号」が営業運転を終えて、11月23日にサヨナラ運転が行われた。
53年も前に製造された車両で、これまでに地球160周に相当する距離を走り続けてくれた。僕が生まれる前から頑張り続けてくれた、とてもとても愛着のある電車である。
引退の3日前、僕は偶然この子を撮影するチャンスに恵まれた。この撮影のタイミングは偶然だったが、向こうから見える車両を3000号と認識できたのには理由があって、それは、この名車を華々しく引退させてやろうと、山陽電車の職員の方々が、この子の顔を磨き上げデビュー当時のペイントにしてくれていたからだ。道具(車両)を大切にするという想いがあるから、お客さんへの安全とサービスの質も高めることができる。僕ももっと物を大切にしなければならない。物には魂が宿る。
大嫌いだった水泳教室に運んでくれたのも、この電車だった。高校時代の3年間を通ったのも、この電車だった。安全に快適に、僕の物語を形成し続けてくれた。お別れするのは寂しいけれど、安全の歴史をつくった先輩としていつまでも語り継がれてほしいと思う。