「ありがとうのひと言で十分さ」と「ありがとうのひと言もない人には何もしてあげたくないね」という表現は、どちらも「ありがとう」を求めているだけなのに、受ける印象がずいぶんと違う。前者は、それほど強く見返りを求めていないのに、後者は見返りを求めてしまっているのが原因である。「与える幸せ」と「得られる幸せ」があって、「得られる幸せ」を前に出してしまうと、それは下心になってしまう。Give&Takeではなく、Give&Give。ただ与え続けるからこそ、確かなものが、少しずつ得られるようになっていくのではないか。それは僕の生きる上での、商売をしていく上での揺るぎない信念である。
ずっと昔から、僕は「与える」という言葉を意識して用いてきた。それは「してやる」という上から目線の言葉ではなく、自分のような存在でも、相手のために何ができるだろうという意思を常に持っておきたかったからだ。年齢と経験を重ねると、人は驕りを持つようになってしまう。戒めなければならない。だから僕は今までもこれからも、ずっと「与える」という言葉を用い続ける。謙虚であり続けたい。謙虚であり続けるからこそ、商売人は商売の道に自己を置くことができる。
これまでのブログのタイトルにも76回「与える」という言葉が用いられていることが分かる。同じことでも、何度も何度も言葉にすることで、それはより強固な決意へとなってゆく。「与えるが先」にあるのはしんどいときもある。それでも、僕は商売人でありたい。だからこそ、身を賭すつもりで「与える」ことへのこだわりを諦めることはしない。