お客様からオーダーを頂いたときに「喜んで」と返事をする飲食店。
確かに愛想のいい笑顔で、元気ある発声なのですが、どこか違和感があります。
その原因は、お客様と店員との会話の中で、省略された言葉を補ってみるとわかるかも
しれません。
客:「(忙しいところすいませんが)生ビールを2つもらえますか?」
店:「喜んで(用意しますよ)」
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さて。
おわかりになったかもしれませんが、「喜んで」という言葉は、相手方の控えめな
気持ちに対して、「控えめである必要はないよ」という意味合いを持って、使う表現
なのです。
つまり、お客さんは知らず知らずのうちに、注文しても良いですか、という控え目な
気持ちを強いられてしまうことになってしまいます。
お客様の方が萎縮してしまう可能性のある表現を、サービス業では特に用いるべき
ではないでしょう。
そのことを、実際にある飲食店で指摘し、早速アルバイトを含む店員さんすべての方に、
「喜んで」のかわりに「ありがとうございます」という表現を使って貰うようにお願い
してみました。
すると、それまでと比べて、お客さんとの「ちょっとした会話」が多く生まれるように
なった、という嬉しい報告をしていただきました。
例)
店:「ご注文ありがとうございます」
客:「がんばってね」「元気いいね」「バイトさんなの?気持ちいい返事だね」etc…
「喜んで」は、いかにもマニュアル化された表現で、省略された語句を補わなくとも、
距離感を感じさせてしまうことのある表現。
それに対して「ありがとうございます」という言い方は、声に出した瞬間、自然と声が
大きくなり、笑顔を伴いやすい表現なので、お客様との距離が近づきやすくなるという
効果を生むようになります。
笑顔は連鎖して、更なる会話へとつながる。
会話は、店の雰囲気を明るくしてくれます、また来たいという気持ちにさせてくれます。
働いている人だって、気持ちがいい。
ほんの一言を口癖にするだけで、何かが変わるってこともあるもんなんですね。
言葉は大切、決して、疎かにしてはいけない、こだわるべきところです。
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ひとつひとつ、すべてすべてが、自分の周囲にある縁、一期一会。
言葉にこだわるという会社の姿勢で、様々なお役に立っていきたいものです。
この文章に触れていただいた、すべての方に。
本当にどうも、ありがとうございます。