「あっちの会では仕事にならなかったでしょう?でも、こっちの会では仕事につながるんです。入会しませんか、おススメしますよ」という勧誘が、僕の大切なお客さんのところに相次いでいる。似たような話を十件以上聞いた。「学びとか気付きじゃなくてね、ここでは仕事を紹介しあうんです。だからお金になるんです」
毎月の会費はもちろん必要で、会には毎回出席しなければ除名をされる。新しい入会者やゲストを連れてこなければ仕事を融通しあう仕組みのなかに入れてもらえない。だから会員たちはこぞって、自分の勧誘しやすい人に甘い言葉を並べ立てて何とか会に連れてこようとする。「仕事になりますよ」という甘い言葉はどこへ、それで結果につながらなければ「自分の努力が足らないのですよ」と更なる投資を促してその人の財や人生を蝕んでいこうとする。結果、胴元と一部の会員だけが利益を享受できる制度になっている。
いろんな考え方があるし、実際にそれで仕事につながる人もいるのだろう。最終的にそれを是とする考えの人もいるのだから、すべてを否定することはしない。ただ、僕がいつもお客さんの相談に乗っていて一緒に考え行きつくのは「商売人としてどうか」というところであって、手法や仕組みにだけ着目するような真似はしない。一時的な数字を上げるために、大切な人のつながり、地元での評判を落とすようでは息の長い商売はできないというのが僕の考え方だ。僕を必要として、僕を信じてくださるお客様には断固として、そんな勧誘からは距離を置くように話をしている。生きていくために数字は大切でも、数字を積み上げるうえで大切な商いの心を汚すようなことをしてはならない。
「与える」ことが先なのではないだろうか。与えて、与えて、与えて、そして見返りを求めない。そこまでして与え続けた人のところに、人もお金も情報も集まってくるのだと僕は思う。目的としてお金を得るのではなく、結果としてお金が返ってくるようになる。そんな綺麗ごとでは食べていけないでしょう?と揶揄されることもあるが、僕はこうして生き続けることでそれを証明する。
僕にできるのは、僕を必要としてくださる方に自分がやってきた商売人としての在り方を伝えることだけだ。人それぞれの考え方は許容する。ただ、僕の中に確固なものとして存在する商売人の信念に抵触するようなものは、徹底的に排除して許さない。