隔離島: フェーズ0 (新潮文庫)を読んでいる。
医療を題材とした作品の多い仙川環さんの作品はすべて読んできた。マクロな人間社会のなかにミクロな人体の仕組みが絡み合って解き明かされていくミステリー。隔離島は特にこの人間関係の闇が絡み合っていて面白い。
閉鎖空間の中にある伝統と因習。物理的に閉ざされた空間の話ではあるけれど、身体的には自由であっても精神的には自由ではない空間に僕たち大人も生きている。風船に真意をぶらさげては、それに気付いてもらえることを奇跡と呼んだり、失意に落ちてみたりするのだから、大人の顔をして生きていくということはとても窮屈だ。
子どもの頃はほんの水たまり程度だったものを、いつのまに、この闇の深度を当たり前のものだと思うようになってしまったのだろう。