母と目が初めて合ったそのときの心でみんな死ねますように
岡野大嗣(twitter/blog「第2ファスナー」)
サイレンと犀 (新鋭短歌シリーズ16)
「最近の親は子どもにこんな変わった名前をつけるんですよね、どうかしてますよね」という論調を、もう、この世に生まれてきて笑い、生きている、その子たちはいつもどんな風にしてそれを聞いているのだろうと考えることがある。誰かの決めた平均や常識から外れるものを叩いて、いま、僕たちはここに立っていることに安堵を覚えようとする。ここはとっても不安定な台の上だ。
子どもの頃の自分の写真のいくつかに、当時の父や母の姿が写りこんでいる。
僕や弟の手を引くその目はとても優しくて、どんな雲にでも手が届きそうなくらいの空の高さに僕たちを抱き上げてくれている。いろんな世界を与え続けてくれた両親は、誰よりも僕たちの幸せを願ってくれていた。それは絶対に絶対だ。
生まれてきたときの想いは名前に生きている、たとえ親が死んだとしてもずっとずっとに。父から一文字をもらったことが嫌だった時期もあるけれど、いまは、この名に父を見ている。