商売をしていれば騙されたり裏切られたりガッカリさせられることもたくさんある。失望が続いて、それ以上ダメージを受けることのないような策を講じることも経験から生まれる知恵のひとつだとは思う。ただしそれは、同じ相手に対して取るべき姿勢であって、性悪説に立ってすべてのお客さんや取引先に同じ風になってしまってはいけないと考えている。商売は性善説で行うもの。そして自社の環境整備や仕組み作りについては性悪説をとって、作業手順を成文化していく。ひとはミスをするものという前提をとる。
権威や実績、武勇伝のなかに組み込まれそうなそれらは期待するほど人の印象には残らない。相手に伝わり、響き、一番残るのは人柄。だからこそ、他を蔑んだり、他に不信感を抱くような言動はしてはならない。性悪説の言葉、性善説の言葉、人柄を伝えて相手との信頼を繋ぐのはどちらの言葉であるか。
与え続けること、与え続けることで繋がっていくもの。僕はそんな商売人の気質が大好きで、相手にどんな風に伝わっていくのかという想像力は大切にしていきたいと考えている。理屈や理論は、すべて感情の統計学であることを忘れてはならない。