多すぎる言葉を払い落したらきれいな空が広がっていた
中畑智江
同じ白さで雪は降りくる (新鋭短歌シリーズ15)
「愚痴なら聞くよ」「ほんと?」
ところが不幸話には、お互いの不幸が重なり始めてしまう。「そんなことかー、だったら俺なんてこんなことあったよ。あるって、そういうもんだって。気にしない気にしない」。吐き出して軽くなるはずだった耳と背には、本来聞く必要のなかった不幸と武勇伝がずしんと詰まって重たくなる。(欲しいのは言葉じゃなかったんだけどな)と、その選択を後悔して帰り道、ため息だけが空気を汚していく。
聞いたり、考えたり、迷ったり、言葉たち。優しくても、染みないときはある。いっそ遮断して見上げた空は、理屈なく澄んでいて軽く、芯までを抜ける。脱ぐように捨てた、その先に得るもの。
高さと広がりと前向きと。
背負ったまんまでは見えない、から、見えるように、吹くように。