「中の見える封筒はDMなどで効果的ですよ」「信書や大事な書類を送るときは透けない封筒で」なんて決まり文句は、全国のどこの印刷屋でも言ってるようなことなんだろう。
いつもは透明に届く彼らのそれは、今回ばかりは透けない封筒を使ってやってきた。「内容が内容だから、この封筒で」という会話があったのかどうかは知らない。すでにネットで承知していたこととはいえ、「ファンクラブの休止」という文字は、真っ黒なペンキになって胸の奥の写真たちを塗り潰していく。通い慣れた校舎がなくなる感覚に似ているのかもしれないと思った。
複数は、一つの対象に向かうとき、一つの空間に集うとき、他人という関係で影響しあう。それがあったから出会えた人もいれば、今回のこれがあって剥がれてしまった人もいる。この関係は奇跡で、脆くもあるのだということ。僕たちはいつも、千切れかけた綱を頼って川を渡り、糸のような弱さの繋がりで伝達しあってる。
雨の直前、風が来て夏の海岸、パラソルは飛んで人たちが逃げて行く様子を眺めていた。晴れたら、また、ここには人が集う。では、僕たちはいつ、晴れるのだろうと、破った封筒を手にしながらずっと考えていた。空はすぐ、こんなに青いのにね。