何年も通った校舎の前にいて、もう同じように帰ることはできないことを思って苦しくなる、こんなに。
賑やかな声や楽器は思い出のままに響いて、違うのは真新しい制服たちの顔。この喪失感は、大切にしていたカセットテープに重ね録りをされたときに似ている。遠くなっていく場所、薄くなっていく記憶。目を細める束の間の回帰。
事故があって、帰れなくなった人たちの存在は知っている。でも、帰れなくなった人たちが、今どこにいるのかは知らない。見えない恐怖からどんな風に逃げていて、奪われた故郷の何色の空を思い出しているのか、想像することさえしない。過ぎていくとはそういうことで、「わたしたち」だった主語が次第に「わたしとあなた」になっていく。
そうして、あのあたりには今も、風に運ばれた見えない何かが積み重なっていることを、時々は思い出して。