トロントの動物園で撮影された、雪を喜ぶパンダの様子。
動物だって喜ぶ非日常に、人間が喜ばないわけがない。これを書いている今、真っ暗な闇の中を雪はしんしんと降り続いていて、明朝の銀世界が期待される。瀬戸内は特に雪の少ないところで、僕の小学校時代の卒業アルバムには、この年は誰が横綱でこの人が総理大臣だったという情報と合わせて「雪が積もった」という歴史が記載されているくらいだ。さあ、朝はどんな顔をして僕の一ページに加わってくれるのだろう。
そういえば、母が口癖のように繰り返すことがある。
「死にたいくらい辛いときに、新潟の平野に降り積もった雪を眺めていて、何もかもを忘れられるくらいに真っ新な気分になることができた」
― 人生で何度も経験することのできない世界を目の当たりにして、嫌なことを忘れるきっかけにしたり謝ってみたり、許してみたりする。非日常は、そんな特別な行動や態度に最適なチャンスになってくれるのかもしれない。「こんな雪に逢えました」なんて写真を添えたメッセージ、疎遠になっている人にはきっと。
朝を信じて。