この街が廃墟になっても後ろ手に空を見上げたままなのでしょう
東直子
十階 短歌日記2007
明石駅に降り立った父は、ホームからお城を望む光景をいたく気に入って、この街に暮らすことを決めたという。お堀があって緑が広がり、目の高さには城がある。それを囲む雄大な青に、父はどんな夢を抱きながら僕を育ててくれたのだろう。想像することは楽しくて、切なくて、公園の土に触れては空を見上げる。そんな風にして、近づいているのかどうかもわからない優しい背を、僕はずっと追いかけていくのだろうと思う。
もういくつ寝ても逢えない二人乗り | 短歌と川柳とマカロニと父の二人乗り、その乗り心地はいまでも覚えている。砂利道を過ぎていく音は、とても気持ちが良かった。