忘れてはならぬ何かを念のため記したはずのあのメモがない
小島ゆかり
純白光 短歌日記2012
忘れっぽい人のことを集中力や意識の問題だと決めつけていた時期があった。心身の不調で、辿ることのできない記憶があるのだと理解できるようになったはつい最近のこと。以来、それをひとの能力だと思い込んではいけないと考えるようになったし、以前、そんな風に決めつけてしまった人たちのことを心から申し訳なく思う。
「あれこれそれ」という言葉が増えてきているのは自覚していて、前にも増してメモの重要性を自覚している。ところが、そのメモの所在がわからなくなってしまったり、どのメモに書いたのかをうっかり忘れてしまうこともある。ようやく探し当てたメモが、まるで宇宙と交信したような内容になっていたとき、僕はしばらくプラネタリウムを漂うしかなかった。
覚える、覚えておくという行為が、年々辛くなる。「方法の問題だよ」と言われても、脳に繋がる信号の何処かが欠損しているのではないかと不安になったりもする。明らかに前と違うのは、一時的な何かなのかどうか。