トタンを打つ雨音に、懐古の情に堪えなくなる。
濡れない場所にある階段を選んでは、何段の高さから飛び降りることが出来たかを競い合った。勇気のある順に記録は更新されて、運動の苦手な僕はとうとうヒーローになることはできなかった。大人になってから勇気を必要とされる場面は幾つもあったけれど、転ぶ痛さを知って、言い訳にして、最近ではもう着地する自分のイメージさえ浮かべようとしない。昨日までに積み上げた塔を守るばかりで、見慣れた景色に満足を言い聞かせている。停滞。
(ここまでしてるのに)
(ここまでしてあげているのに)
見返りを求める、内なる声の消し方を知りたいなぁと思う。年齢を重ねれば「そんなもんだよ」と涼しい顔で言えるようになるのだと考えていたけれど、執着し続ける自分は昔から変わることがない。そして「おかげさまで」以外のリアクションに戸惑っては、人間関係を気まずくしてしまう。わかっているのに、わかっているのだけど、で、深淵を覗くことになる。
すこし、後ろを向きがちな自分のこころは、きっと、花粉のせい。