最近の歳時記には花粉症を季語として採り入れるものもあるのだとか。降り続く雨はないという言葉もあるが、それにしても、春の来るまでのこの時期は本当に憂鬱なものである▼屋根の下の時間が増えて、活字に向き合う時間が長くなる。昨年の10月に亡くなった流通ジャーナリスト金子哲雄さんの「僕の死に方 エンディングダイアリー500日」(小学館)には感銘を受けた。自分という人間の観られ方、そして死生観。人はこの世に関わりを持つために生まれてきたものであることを知る。自分はかく生きられるだろうか、残すことが出来るだろうか▼短詩のなかに、青々しいまでのその時々の命を刻んでいきたいと思う、今年も、これからもずっと。
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杉の舞う日は宙に向く言葉たち
月刊ふあうすと 2013/2月号
裏表紙掲載