ほんの小さな、ささやかな喜びを憶えていられるほうが、その人生は幸せに違いない。日常のなかに重なるそれらを綴るのに、この川柳という手段があって、今年はどれだけの幸を17文字に閉じ込めることが出来ただろうか。忙しい? 余裕がなかった? だからこそ、であるはずの世界に、ちゃんと向き合えなかったことが心残り▼葉が落ちて、枝だけになった樹木。右の枝は左の枝の都合を知るわけもないのに、均等に伸びた左右。毎日のコツコツは、形ある方向へと収束していくことに気付かされる。来年はどんな365段を積み上げようか▼一年を生きられた、与えられた。そのすべてに感謝して、来年の空の色を想い、祈る。
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耳たぶに風 幸せの顔をして
月刊ふあうすと 2013/1月号
裏表紙掲載