一瞬が全てを裂いた。
冷たい朝だったことを覚えている。
雪は、廃墟に立ちつくすひとたちを刺しながら舞った。
訪れてくれた友たちと、温度を求めて街を彷徨った。
元町にある父と母の店は、燃えているのだろうと思った。
もう、大学受験も諦めようと思った。
水、光、温度。
いつもの当たり前が、いつかの記憶になった。
一瞬が全てを裂いた。
ゼロにしようと、それは、とてもとても、強い力で、長い始まりだった。
あの日を境に、止まってしまったものもある。
あの日を境に、変わってしまったものもある。
そして、僕は生きている。
以来、僕の、温度という言葉を好んで使うようになった理由。
語るには、過ごしただけの時間を必要とするらしく、
行間に織り込んだ気持ちで、この日のこの時間を迎えることになる。
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【川柳】震災の夜 神様のような湯気
ふあうすと2009年3月号
明境府に掲載