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父の胸にもっと酸素をください。

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朝日を迎える頃、少しだけほっとした。

夜中、鳴り出す電話をイメージして、胸の鼓動が高鳴る。
悪い想像なんてしなければいいのに、病院からの「万が一」を伝える声が
そこからやってくるようで、落ち着かない。

父は大丈夫だろうか、父は、元に戻っただろうか ―。

寝不足をひきずって出社、そしてすぐ、こぶたさんの旅立ちを知らせるメール。

父のことを心配しているタイミングで、不意を突かれたような感じがした。
とても大切な人、もっともっとがんばってほしかった人。

淋しさと苦しさが、交互に襲い始める。

いなくなってしまった
 いなくなってしまうかもしれない
いなくなってしまった
 いなくなってしまうかもしれない

表情と心情のスイッチを切る。 仕事に集中しろ。

年末からたまっていた伝票の整理と入力。
諸連絡。
メール対応。
コピー、原稿書き。
文字入力。

夕方、父の見舞いに行っているはずの母と弟から連絡がない。

走り出したい衝動にかられる。
もう、この頃になると、すっかり冷静ではない自分を自覚している。

関係のない話題を持ち出して、気持ちを切り替える。 仕事の報告を聞いて、
区切りのいいところまで進めておいて、会社を先に抜け、病院へ急ぐ。

管、モニタ、酸素マスク。

苦しそうに呼吸をする父。
助けを求めるようなうめき声を時々あげている。

それでも、昨日よりはだいぶ状態はいいそうだ。

本来、一日間隔のはずの人工透析を、明日も行うことにして、体内の水分
コントロールを図るとのこと。胸にたまった水を抜いて、呼吸を楽にすることが
目的だ。

身体の各部分をさする家族。

涙が零れてしまいそうで、自分は、少し離れたところから、祈ることしか
出来ない冷たい人間。

 「昨日よりは良くなってるからって、楽しみに会いに来たのにさー。
  もっともっと、元気になってもらわにゃ困るやないかぁ」

呼吸も苦しいんだろ、だったら頷かないでいい。

とにかく、早く元気になってくれ ―。

眠るのを待って、病室をあとに。

でも、会えて良かった。
表情を見て、想像ほどではなかったことに安堵した。

明日は明後日は、きっともっと大丈夫だろう。

いまは、そんな確信を抱きながら、今日を綴っている。

木曜日、明日は。

ごめん、親父、見舞いには行けないけれど。
願わくば、家族の誰かから「昨日より、元気」って、そんな軽い報告が聞けるように。

元に、元通りに、戻っていてくれな。

祈ってる、願ってる。
な。

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