選者:中川 一さんの選後評
何故「鬼」と「胃薬」が並列にならぶのか。その意外性が句の幅を広げる。
臆病になった鬼は縄張りの外へ少しでもはみ出すことを恐れ、胃薬は箱と
説明書に使用上の注意をぴっしりと書く。すべてが枠内、枠内と押さえ込まれ、
縮小してゆく。その小心さがときに爆発して、戦争を引き起こすことにもなる。
表現上「も」は句の力を弱めることが多いので、可能な限り使わないように奨めて
いるのだが、この場合はどうだろうか。「鬼は胃薬は」のほうがよいようにも
思えるが、「鬼が胃薬が」を含めて、どれがよいか作者も読者も考えてみて欲しい。
句は一字が命であるから。
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月刊川柳誌「ふあうすと」では、こうして、選者の方が、いくつかの句をピック
アップして、選後の評をつけてくださいます。
それに励まされ、学ぶことも非常に多くて、川柳を「生涯の趣味」とされて
いる方もたくさんいらっしゃいます。
神戸に限らず、全国にたくさんの「柳友」がいるのも、ふあうすとの特長のひとつ。
なんて記事もありましたが、川柳だって同じ。
短い言葉のなかに、景色や心情を織り込む作業は、とても「脳」にいい作業で
あることを実感しています。
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見本誌、お送りいたします。
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【掲載】白線の内側 鬼も胃薬も
ふあうすと2007年06月号
全人抄(中川 一選)