先日、別ブログでこんな記事を書いた。
四十代はとにかく、身体のあちこちを悪くした。頸椎ヘルニアもそう、コロナになったのもそう。目の病気にもなり、その後もずっと内科と眼科には通い続けている。大きな病院なのに、あちこちで挨拶をする人が増えてしまったのは、それだけ自分が常連だということだ。病院の常連とは。
毎月の通院の甲斐もあって、血液検査の数値もようやく正常値で安定するようになってきた。目の病気が悪化するペースも緩やかになっていて、比較的安定を保てている状況。
あとは、ばね指の問題である。
ばね指の症状
症状の特徴
- 指の曲げ伸ばしがスムーズにできない
- 指を曲げたあと、伸ばすときに「カクン!」とばねのように跳ねる感じがある
- 朝、特にこわばる
- 朝起きたときに指がこわばって、動かしにくいことが多い
- 痛みがある
- 指の付け根(手のひら側)に痛みや腫れ、押すと痛い「圧痛」がある
- 進行すると指が動かなくなることも
- 重症になると、指が完全に曲がったまま戻らなくなる場合もあります
内科や眼科での治療を優先しなければならなかったので、ばね指はずっと放置してきた。最初に違和感を覚えたのはもう、3年以上前になると思う。なんだか指の動きがスムーズじゃないな。お、かくんかくんとした動きが面白いな。あはは、話のネタにいいぞ、これ。わーい、どうもかっくんです、とか。
ところが、身体はうまくできているものである。内科や眼科での症状が落ち着いてきたと思ったら、今度はこのばね指の症状がひどくなってきてしまった。
パソコンで文字を入力していても、人差し指が担当するキーだけ「抜け」が生じる。漏れがないよう意識して作業していると、今度は思考のアウトプットが妨げられてしまう。つまり、仕事にならない。
そして痛みである。朝起きると、指がまったく動かない。かたまっている。もう片方の手(右手)で無理やり指を動かし、ぎゃぁぁぁと悲鳴をあげて、硬直から解放をする。毎朝の儀式。そしてこの痛みはやがて日中にも生じるようになり、手のひら全体に痛みが広がっていった。街中で急に立ち止まり、痛みが引くまでしばらくうずくまる。それくらいの痛みと重さで苦しむようになり、日常生活にも支障が出るようになってしまった。
ばね指にステロイド(リンデロン)注射治療を受けてきました
で、見出しの通り。整形外科に行ってステロイド(リンデロン)注射を受けてきた。

エコーで見ると、指の腱鞘(けんしょう)にひどい炎症の起きていることが分かる。腱鞘というトンネルの間を腱(けん)が動くことによって指は動くのだそうだが、このトンネルが分厚くなってしまい、本来スムーズに動く腱が完全に身動きが取れなくなってしまっているらしい。
「先生、俺のん、ひどいの?」
「かなり分厚いなぁ。注射する?」
「痛い?」
「めっちゃ痛いで」
この先生とは頸椎ヘルニアになったときからの長い付き合いである。余談だが、自分が小学校二年生の時に頭を大けがして救急車で運ばれたときは、この先生のお父さんに診察していただいた。
「先生、注射へたっぴやん?」
「ほなやめとく?」
「うそ、やだ。やって♡」
病院には様々な患者さんが来るそうだが、「よっ、先生、元気っ?」と言って入ってくるのは僕以外にももう一人いるらしい。おお、こういうノリの人は他にもいるんだ。
「せんせ。麻酔は?」
「んなもんない」
「やぶー」
先生のことを信頼しているからこそ、こんな会話をして緊張を解きほぐす。自分は絶対的怖がりであって、注射に意識を集中すると倒れてしまうのだ。
「ほないくで」
ぬぁあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ
痛い痛い痛い痛い痛い痛い。
指の付け根のあたりにぶすっと来たのが分かる。細い針だそうだが、そんな場所に注射を刺されたのは初めての経験で、まるで釘でも入ってきたかのように重たい。痛い。先生はエコーの画面を見ながら、肥大した部分に針が刺さるよう頑張ってくれているらしい。
「せんせ、まだ?」
「まだ」
「まだ抜かないの?」
「まだ」
「せんせ、車掌さんのモノマネしていい?」
「それで和むのならどうぞ」
針のささった状態で、看護師さんたち相手にモノマネを披露する。笑ってくれる。でもまだ注射は終わらない。痛い。
針の刺さっていた時間は1分近かったのではないだろうか。正確に測ったわけではないので分からないが、とにかく痛かった。眼球への注射は「恐い」が「痛くはない」。指の付け根への注射は「めちゃくちゃ痛い」。正直な感想だ。
「終わったで。しばらく手を洗わないようにして」
「今晩お風呂にはいってもいいの?」
「好きにし」
同じ診察室内にいる紳士の方が僕らの会話を見て笑っている。
「先生、俺、あの人と名刺交換してきたほうがええんかな?」
「ここはそういう場所じゃないから」
ステロイド(リンデロン)注射治療を受けて二日。その後の経過について
指に注射をしてから二日が経った。
先生曰く、この注射によって炎症が軽減して、少しずつスムーズに指が動くようになるらしい。大抵の人は一週間程度でその効果を認めるそうだが、中にはまったく効果のない人もいるそう。症状のひどい自分の場合は、効かないかもしれないと言われたが…。
効いている。
注射をした次の日の朝、「こわばった指を解放する」という朝の儀式がまず必要なかった。手のひら全体への痛みもなく、指も注射前より明らかに滑らかに動く。
さらにもう一日が経って、これを書いているのが注射をしてから二日後。動きはさらに滑らかになって、かくんかくんとした動きもほぼなくなっている。かっくん指数が100だったとすれば、今は30くらい。まだピアノを弾くには違和感があるものの、パソコンのキーを打つ程度にはほとんど支障がなくなった。ミスタッチもだいぶ減っている。
注射をしたあたりはすこし青っぽくなっているが、総じて問題はなし。体調にも変化はなく、「ものを持つと落とすのではないか」という不安から逃れられたことも、自分の気持ちを明るくしてくれている。
個人差はあるが、注射の効果は数か月程度持続するらしい。しばらくして、また炎症が出てきてしまう人もいれば、そのまま治ってしまう人もいるし、ある程度の違和感ならば許容してしまう人もいるのだとか。考え方はそれぞれだなぁ。
「完全に治ったら、先生、俺のピアノコンサート来てくれる?」
「いけへん」
やぶめぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ。