「まったくもう、新型コロナウイルスのせいで移動の自粛を求められているのに出歩くだなんて、意識が低いんじゃないですか? 自分なんて、在来線にすら乗らないように気をつけてますよ」と煽っていたマルチ商法の幹部の人が、遠方までマルチ商法のセミナーで足を運んでいると聞いたよボーイ。HAHAHA。だいじょうぶだ。きっと外すことのできない大切な仕事だったんだろう。そりゃそうだ。時代はこんなに混沌としている。不安を煽りまくって商品を売りつけまくるのにはもってこいの時期だ。いけいけどんどんだ。
でもねいいかい、ボーイ。気をつけるんだ。
知ってるかい? 2018年にはじめて「霊感商法」という言葉が法律用語になったんだ。そしてとうとう2019年から改正施行されたんだよ。消費者契約法っていうんだ。
これまでみたいに「クーリングオフの期限は過ぎてますよ」なんて言って、契約を有耶無耶にすることはできない。改正された法律ではね、5年間は取り消しを認められるようになったんだ。「うはー、なんか、色々不安になるようなこと言われましたけど、やっぱキャンセルしますー。お金かえしてくださいー」という申し出は5年間有効(=5年で時効を迎える)なんだよ。民法の規定? HAHAHA、安心しなよボーイ。消費者契約法は特別法といって、民法よりも上位にあるんだ。「民法では」と彼らが言い出したら「消費者契約法ですよ?」と言ってあげたらいい。
しかもだ。
君はもしかすると、銀の板を買わされたかもしれない。銀の効果は数年で消えてしまうので、金の方がオススメですよと言われたかもしれない。あるいは、情報とは水の流れ。だから、良質な水を買いなさいと言われたかもしれない。塩を買えと言われたかもしれないね。
そういうのは「全部返品可能」なんだ。板を汚しちゃった? 水、使っちゃった?
気にする必要はない。
消費者契約法では「残っているものを返品すればいいし、残ってなければなかったで、それはそれで返金請求をすればいい」と定められている。つまり【不安になるようなことを言われて支払ったお金は、5年以内であれば全額返金してもらえる】んだ。だからボーイ、君は大丈夫だ。とりあえず消費者庁に電話をしてみたらいい。ちなみに消費者庁の電話番号は【霊感商法イヤヤ(188)】だ。
お友だちがマルチな霊感商法に勧誘してくる? 「いやいや、マルチじゃないですよ。だってこれはポイント制のキャッシュバック、どんな業界でも代理店制度ってあるでしょう?」と言って、こちらの忠告に耳を貸さない?
だったらこの法律のことを教えてあげてほしい。
彼らはこの法律がある限り、契約から5年以内は返金のリスクを抱えなければならない。その間に払った幹部へのキャッシュバック、税金、保険料、そして、水や塩の仕入れにかかった費用は、消費者に返金したからといって、戻ってくるわけではない。全部自分で抱えなければならないんだ。
幹部は上手に、自分名義の資産を抱えないようにしている。
ほら、こんな風に資産を持つことができるんだよ、と君がもし、それなりの不動産を誇示されるようなことがあったなら、その物件の登記を調べておくことをオススメするよ。いいかいボーイ、マルチはいつだって、親ネズミだけが得をするようになっていて、親ネズミは自分のチーズだけを上手に隠す仕組みになってるんだよ。歴史は繰り返されるんだ。
ボーイ。
時代は混沌としている。
みんな、不安なんだ。
しんどいよ。
でもね、10年未来に振り返ったとき、自分はどうして他人の不安につけ込むような真似をしてしまったのだろうなんて後悔をする生き方をしてはならない。僕はそんな風に思うんだ。ボーイ、君はどうかな。