世の中は後出しジャンケンに満ちている。
えぇぇ、いま、言いますか。今さら、言ってきますか。「おつかれさま」よりも「ありがとう」よりも前に、「これ、どういう意図でこんな風にしたの?」なんて、このタイミングで、しかもみんなの聞いている場所で言ってきちゃいますか。えぇぇ、そうですか、そうなんですね。くてー。
ありとあらゆる回避策を企てても、後出しジャンケンは時々やってきて、僕を疲弊させる。どうしようもない。だったらもう、後出しジャンケンがあることを前提にして「皆さん、いいですかー。僕はいまから、あんなことを考えて、こんな風にしますからね。今ならまだ間に合いますからね。言ってくださいね」と宣言してしまうことだけが、唯一、自分のストレスを軽減させる方法なのだと割り切るようにした。あらかじめ、皆の前で宣言をしておけば、誰かの後出しジャンケンがあったときに、守ってくれるひとが現れる。「あれ、西端くん、ちゃんと事前に確認してたよね?」
万人に受け入れられようとすると疲れるのだ。自分には自分のやり方しかできない。自分のやり方が気に食わない人は、自然と離れていく。それでいいではないか。そのための宣言だ。「僕はこの道を行きますよ、いいですか、えぶりばで」。安寧は自分で作り出さなければ。
「後出しジャンケンお化け」は「いや、聞いてないよお化け」になることもあるが、僕はお化けを退治するために生きているわけでない。子どものころから、夜が来ると怖かった。お化けがやってきそうで怖かったのだ。子どものころから苦手だったお化けが、大人になったから克服できるとは限らない。お化けにはそう、「布団をかぶって見ないふりをする」のが一番だ。どうだ、どうだ、これが僕だぞ、お化けどもめ。わーい。