前川企画印刷のことを、「神戸で一番さん付けをされる会社」だと僕は書いて、その理由を問われる会話の流れに持ち込もうとする。答え方はいつも決まってる。「実際に前川企画印刷で検索してみてください」
流行りの安っぽい言葉でいえば、それはブランディングってことだ。ブランディングってのはつまり、お客さんからどんな風に評されているかということ。自社の名前で検索してみたところ、コンサルのページが出てきて「**という会社のブランディングに携わらせていただきました」なんて制作実績のページが出てくれば本末転倒。取り組みや想いは、見返りを求めて意図的に行うものではなく、当然の姿勢として継続し、伝え続けるもの。黒子になりきれないフィクサーは、会社の価値を下げてしまう。
では、僕たちはこれだけたくさん、ネット上で「さん付け」をされるようになったからブランディングが成功したのかといえば、決してそういうことはない。期待は期待を呼んで、期待値を上げていくものだから、ちょっとした「足らず」は、お客様からの不信の声となって未来永劫、ネットに残り続けることになる。今度は一転、そう、棘に似た声に耳を傾けながら、己の不足を省みて足して磨いていく、そんな時間を積み重ねていかねばならない。
なぜ僕がブランディングという手法に嫌悪感を示すかというと、周囲からの期待はいつか反転する時期を迎えて、そしてまた上昇していくのだというところまでを想像せず、ほんのひとときの話題になることで良しとするものが多いからだ。足らずを埋めたくて埋まらない苦悩は、虚業ではなく、実業を営まなければ決して理解することは出来ないだろう。
お褒めの言葉はエネルギーになる。しかし、商売を営んでいく者は、お叱りの声にこそ珠玉の価値があるのだということを知らなければならない。情報発信やブランディングという言葉の正の方向にある価値だけではなく、負に見えるものの中に存在するものを見出す覚悟があるかどうか。安っぽい手法に踊って踊らされて、持続しない未来が見透かされているようでは、僕たちは「やっぱりな」というため息だけを浴びせ続けられることとなる。