風鈴の思い出しては鳴っているあれはゆうべの星との会話
杉崎恒夫
パン屋のパンセ
縁側、冷たい水。蝉の声、高校野球の実況中継に団扇の風、時折、風鈴。
夏は空がキーンとしていて、ひとつひとつの景色や音が色濃く残ってる。まだ、父もいて愛犬たちもいた子どもの頃、夕暮れの風鈴はひと際で、夜になっても余韻を伝え続けていた。都会化が進んで、風鈴も騒音に感じられるようになってしまった地域もあるらしい。人それぞれ、でも、僕は月や星に吊るされたように鳴るその音色が大好きだ。
地球上の海岸の、砂の一粒一粒を集めても、宙の星たちの数には及ばないということを知った。星の正確な数は誰も知らなくて、星になる話の神秘を信じるのは誰も自由で。静かに語らってみるのもいいけれど、時折、響く、その音に耳を澄ませながら懐かしい時間に触れてみる。昔からの時間が敷き詰められていく幻想の夜を、そんな風に過ごしてみるのも悪くない。