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アヒルたちに学ぶ差別化のための自己開示

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ベンチに座って遠くを眺めているだけで、アヒルたちは期待の顔をして近付いてきてくれる。

ベンチに座るのは、何かを与えてくれる優しい人たちだということを知っているのだろう。あいにく、何も持ち合わせていないことを申し訳なく思う。

しばらくして、少し離れたベンチの人にパンをもらうことを決めたらしい彼ら(彼女ら)。愛嬌ある癒しの姿で、生きるためのパンを得ていく姿は見事だ。

売るのではなく、選ばれるということ

パンを得る目的があったとしても、下心を顔にして、遠く離れたところにいては彼らの想いが届くことはない。懐に飛び込んで、積極的に自分を開示しようとする姿に心は動かされる。

ましてや、その純朴な表情である。他を蔑むことはなく、牙を剝いてくるわけでもない。自分だけを際立たせようとする差別化の自意識は、かえって疎外されてしまうということを人間に教えてくれているようにも思える。

選ばれるということは、他を蹴落とすことではないのだ。

発信と交流の時代、言葉を選ぶ重要性

二つのフレーズを並べてみる。

「あの会社はこういうところが劣っていますから。だからウチを選ばれた方がお得ですよ」
「あの会社の商品を選ばれる方は多いですよ、さすが、よく研究されていますね」

僕たちがお客さんの立場になったとき、偏りのない情報を与えてくれると感じるのはどちらだろう? 携帯のメモリにどちらかを友人として登録しなければならないとき、選びたいのはどちらだろう?

「売る」ためには「選ばれる」プロセスが必要である。そこを飛ばして、価値を伝えようとしても、売り文句だけの並んだ単なる作文になってしまう。「発信の必要性」という言葉に焦って他を蹴落とす武器を手にすれば、かえって自分の価値を下げてしまうということに、そろそろ気付いていかなければならないのだろう。

パンを貰い終えたアヒルたちが、戻ってきて昼寝を始めた。どうやら僕の近くで寝ることは安心であると彼らに選んでもらえたようで、ホッとしている。

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