夕焼けに一番近いクレーン車
山口早苗
三省堂現代女流川柳鑑賞事典
背中には夕焼けがいて、一日を終える頃に見上げるクレーン車が好き。動く気配はないけれど、汗をかいていたような雰囲気だけが残るその。今日はどれだけの何かが、右から左へ、下から上へ運ばれていったのだろう。昨日とは確実に違う様相を、もうすぐ、月だけが優しく微笑む。
くたびれたときに訪れる海があって、その場所からは、錆びたレールやクレーン車、もう使われることのないバケツのようなものが散見される。整然としていないひとつひとつが、何故か不思議と「生」を感じさせてくれて、僕はしばらく充電をして過ごす。今日を生きた誰かは、薄暮に包まれて、いま、どんなひとときの中にいるのだろう。