コーヒーの苦さ嬉しい時もあり
倉間しおり
かぐや―川柳少女の十五の夜
倉間しおりさんは15歳で句集を出版された川柳界注目の少女。「ゼロという数字に目鼻書いてみる」「枯れ枝は何を求めて手を空へ」「ひとりでは月に帰れぬかぐや姫」と感性豊かに世界を表現するかと思えば、「眠れないのをコーヒーのせいにする」「手始めにどこを攻めようパフェの城」など、少女から大人へと駆けていく踊り場の情景を瑞々しく伝えてくれたりする。透明なようでいて秘めるものがある、大人たちがみんな通ってきた道を照らす17文字。
いつまでも子どもでいたいような気もしたし、いつまでも子ども扱いされたくないような気もした。隣町まで自転車で行った冒険が大人になった最初だったかもしれないし、通学定期券で景色をびゅんと飛ばし始めた頃がそうだったのかもしれない。ひとつひとつが曖昧になっていく大人を重ねて、遠くなってしまう制服のころの自分がいても、世界に限界を決めなかったことだけはちゃんと覚えてる。
コーヒーを飲み干して吐いた息の蒼、むかしむかしの自分は想像もしなかった色をしてるね。