痛み止め塗ってもらったちぎれ雲
赤松ますみ
川柳作家全集赤松ますみ
地球に最接近した火星が月と並ぶというニュース。FaceookやTwitterに、それぞれの場所から見える星たちが並んだ。
見上げて写真を撮れば、空はそれらしい表情をした景色になってくれる。だから、今さら、空を見上げて息を吐くくらいならば、解決のための一歩目を踏み出しなさいという正論があるのも承知はしている。大人の事情で頬を流れたひと筋は、痛くて冷たいのだから、僕は集団を離れた雲の自由にあしたを重ねて、しばらくを過ごすけれど。
「夕暮は大きな書物だ/すべてがそこに書いてある/始まることや/終わることや―/始まりも終りもしない頁の中に」 – 谷川俊太郎さんの写真ノ中ノ空のなかの一節。赤松ますみさんの句に触れて、僕は谷川俊太郎さんのこの言葉を思い出した。色のある世界に心を奪われながら、無色無形に帰っていく。だから人は、あかね色の空に預けるように涙をこぼせるのかもしれない。